アニメ&ゲームの雑学・豆知識

アニメやゲーム、マンガ、特撮、おもちゃについての雑学・うんちく・豆知識・トリビアを集めたサイトです。気になった記事や文章を個人のメモとして投稿しています

『銀河英雄伝説』パエッタとはいかなる人物だったか

①自由惑星同盟軍②中将③アキレウス級旗艦用戦艦『パトロクロス』④小説版、OVA版など

 

同盟軍屈指の宿将の一人。劇中では第二艦隊司令、後には第一艦隊司令として活躍する。一般には「ミラクルヤンの以前の上官」としての認識のみが強い不幸な人物でもある。

実際の彼は同盟、帝国両軍の中でも一際輝く武勲の持ち主であり、その能力も傑出したものであった。主要なものだけでも「レグニッツア上空遭遇戦」「第四次ティアマト会戦」「アスターテ会戦」「ランテマリオ会戦」など幾多の戦闘に参加し、赫々たる戦果を挙げている。特に、レグニッツア上空遭遇戦では第二艦隊麾下の戦艦『ラードル』が敵司令官ラインハルト大将(当時)の乗艦である『ブリュンヒルト』に直撃弾を与えるまでに帝国艦隊を圧倒している。不幸な事に、惑星レグニッツァの大気異常によりブリュンヒルトを撃沈するには至らなかったが、彼の手腕が如何に傑出していたかを顕す好例といえるだろう。

しかし、先述どおり彼の評価は一般には決して高くない。むしろ、アスターテ会戦などではミラクルヤンの名声を高める為か、彼の行動が不当に貶められている感があるのは大変残念な事である。

確かにアスターテ会戦で彼は当時第二艦隊参謀長であったヤンの立案した作戦を採用せず、結果として同盟軍は敗北するのだが、かといってヤンの作戦を採用していれば同盟軍が敗北を免れえたかといえば、それはかなり疑問である。と、いうより、「作戦」として破綻しているのは、明らかにヤンの提示したもの(註1)であり、この点からもパエッタの示した見識は全く正しいものと思われる。因みに、彼はヤンの提示した作戦を退ける際に、わざわざ「君に含む所が有る訳ではないよ」とまで言って、部下であるヤンのことを慮っている。これはなかなか出来る事ではない。パエッタの人間的魅力の一部分と言えようか。

アスターテ会戦で重傷を負った彼は、後方で療養する事となり、第二艦隊の指揮を離れる事となった。その療養中の彼の耳に飛び込んできたのが、かつての部下であるヤンが新設の第十三艦隊を指揮し、難攻不落のイゼルローン要塞を陥落させたというニュースである。この快挙を聞いた彼の胸中は複雑だったであろう。何故なら、第十三艦隊の基幹を成すのは彼が長年指揮し、苦楽を共にしてきた第二艦隊の将兵たちであったのだから。

続くアムリッツア会戦および、救国軍事会議によるクーデターのいずれにも彼の名が現れる事はない。いまだ療養中だったのか、それとも既に職務に復帰していたのかは明らかではない。彼の名が再び現れるのは、フォーク准将に刺されて負傷したクブルスリー第一艦隊司令(註2)の後任として第一艦隊司令に就任してからである。

しかし、当時既に同盟軍は戦力の大部分をアムリッツアで失い、防戦を重ねる一方だった。首都星系防衛が主任務の第一艦隊は前線に出ることもなく、パエッタは日に日に悪化していく戦況をただ傍観する事しかできなかった。

しかし、宇宙暦799年(帝国暦490年)一月、状況は急変する。ラインハルト・フォン・ローエングラム指揮する銀河帝国軍がイゼルローン回廊ではなくフェザーン回廊を経由しての同盟領侵攻作戦を発動したのである。兵力で絶対的に劣る同盟軍はこの攻勢を防ぐ事が出来ず、帝国軍を同盟領奥深くまで誘い込み、イゼルローンなど各地に散在する兵力を結集する事によって帝国軍に決戦を挑もうとする。このときに最終防衛ラインとされたのがランテマリオ星域である。

結局、開戦までにイゼルローンのヤン艦隊は間に合わず、同盟軍32,900隻、帝国軍112,700隻という絶望的な戦力差の中、ランテマリオ会戦(註3)が始まる。パエッタにとっては復帰後初めての実戦であると同時に、最後の戦闘でもあった。

しかし、パエッタがこの時指揮していたのは6,000隻程度の小艦隊であった。本来なら序列的にも能力的にも宇宙艦隊司令長官の職に就いていても不思議ではない彼に与えられたのは、分艦隊程度に過ぎない兵力だったのである。第一艦隊司令である彼の指揮下には当然、定数1,6000隻の兵力がある筈であり、指揮統制上からもそれが常識である。しかし、陣頭指揮をとるビュコック元帥は何故かそれらの原則を無視、パエッタの元から同盟軍最精鋭の艦隊を取り上げたのである。或いは政治力を持たず、あくまで一軍人たらんとするパエッタをビュコックが煙たがったのかもしれないが、この理不尽な仕打ちにもパエッタは不平一つ言わず、自らの職務を全うする。

結局、帝国軍の物量やビュコック総司令の無謀な突撃命令によって同盟艦隊は瓦解、ヤン艦隊の来援した頃には同盟軍の敗北は確定的であった。しかし、この時唯一気を吐いていたのが誰あろう、パエッタ提督である。左翼に位置するパエッタ艦隊は正面にファーレンハイト艦隊とミュラー艦隊、左には恒星ランテマリオという背水の陣の中奮戦、他の艦隊が次々と崩壊していく中最後まで戦線を維持、その気概を見せ付けたのである。結果的に彼の奮戦が同盟艦隊の完全崩壊を阻止したといっても過言ではないだろう。ランテマリオ会戦以後に彼が再び艦隊の指揮を執る事はなかった。しかし、彼は同盟軍最後の艦隊戦で遺憾なく同盟軍人の意地を見せ付けたのである。

パエッタは自由惑星同盟の降伏を見届けた後は軍や政治に対して一切発言する事無く、静かな余生を送っていた。しかし宇宙暦801年(帝国暦492年)3月、彼は突如として帝国軍に拘束されラグプール刑務所に収監された。所謂「オーベルシュタインの草刈」に引っかかったのである。逆に見れば、それだけ帝国軍がパエッタの能力を評価し、恐れていた事の証左と言えるかもしれない。

一ヵ月後の4月、突如ラグプール刑務所で暴動が発生、パエッタは不幸にもこれに巻き込まれて死亡する。かつての同盟軍宿将のあまりにも哀れな、そして不可解な最後である。同盟の名士録からもその名が消されるなど、パエッタの死には陰謀の影が色濃く現れている。彼は死の瞬間に一体何を思っていたのであろうか。

見てきたとおり、パエッタはその功績と比して、あまり報われる事のなかった不遇の人である。姑息な敗戦糊塗の為、英雄として祀り上げられ、次々と昇進を重ねていくヤンおよびその一派の陰で、彼は最後まで中将であり続けた。彼の胸中を察するに余りあるものがある。しかし、彼はそうした事に対して一切の抗弁をせず、かつての部下達から下される命令に対しても従順に従い続けた。彼は自分の居場所をあくまで戦場に置き続けたのである。

パエッタ提督。彼こそは自由惑星同盟が生んだ最後の、そして真の軍人であった。

 

註1:戦史研究参照。

註2:クブルスリーが統合作戦部長に就任するのが796年であるが、この時第一艦隊の指揮をどうしたのかが判然としない。統合作戦部長と第一艦隊司令を兼任したのか、或いは他の人間が艦隊司令に就任したのか・・・・クーデター時には第一艦隊が全く動きを見せていない事から、現在までの所、兼任説が最も有力なように思える。

註3:戦史研究参照。