アニメ&ゲームの雑学・豆知識

アニメやゲーム、マンガ、特撮、おもちゃについての雑学・うんちく・豆知識・トリビアを集めたサイトです。気になった記事や文章を個人のメモとして投稿しています

ガミラス艦船史

ガミラス艦船史(1)はじめに

 

かつては私も旧地球防衛軍の一員としてガミラスに対抗した。

対抗しながら、これらの強大な敵戦艦がいったいどのような歴史を辿って進化して来たのかについて、次第に興味を持つようになっていった。

放射能に脅かされ、明日をも知れぬ運命にありながら、私は過去を欲していた。

しかし今となってはガミラス艦船史を詳細に追うことは不可能である。

我が地球防衛軍のヤマトによってガミラス星は半壊し、その後の星間戦争によって爆発四散してしまったからだ。

貴重な歴史は今や完全に失われてしまった。

現在我々地球人が入手することの出来るガミラスの資料は、ヤマトや地球防衛軍がガミラスの基地や艦艇の残骸などから得た情報、そしてガルマン・ガミラスに伝えられたわずかな情報のみである。

乏しい資料ではあるが、これら断片からガミラス艦船史を追っていこうと思う。

 

 

 

ガミラス艦船史(2)ガミラス艦種類別考・1

 

地球侵攻時の旧ガミラス帝国の艦艇は、当時の地球をはるかに超越した科学によって構成されていた。

特に波動エンジンという超光速航行を可能にする機関は、遥か14万8千光年の彼方よりの地球侵攻を可能ならしめた原動力であった。

ここでは波動エンジンに関して深くは触れないが、当時の地球防衛軍が何よりも欲していたのがこのエンジンの秘密だったことは各種文献、回想録などから、激しい感情の迸りと共に今に伝わる。

いかなる犠牲を払ってでも敵宇宙船のエンジンを入手せよという命令が出ていたのも当然のことである。

実際に大きな犠牲を支払い、それと非常な幸運をもって地球人類は波動エンジンを入手、愁眉を開いたわけであるが、この物語は既に幾多の著書、映像によって述べられているので割愛する。

 

さて旧ガミラス帝国の艦艇であるが、地球防衛軍はその外観から大きく3種類に類別した。

地球侵攻艦隊の主力であった「ガミラス・デストロイヤー」に代表されるオカリナ型、地球全土を空襲して回った「ガミラス空母」などに見られる円盤型、希に姿を見せたシュルツ司令の旗艦と思われる「超弩級戦艦」を指す葉巻型の3種類である。

後にヤマトが接触した「戦闘空母」や「三段空母」は、ヤマト帰還後の情報整理で(かなり無理があったが)葉巻型に類別された。

百歩譲って戦闘空母は葉巻を二本束ねたように見えないこともないが、三段空母を葉巻型と説明するに至っては赤面するばかりである。

地球防衛軍士官学校の教官からそんな苦労話を聞かされたことがある。私も同感であった。

 

改めて言うが、これらはもちろん地球側の論理による類別である。

初めて接触した宇宙生命体の戦闘兵器の機能など、向こうが動いてみて(それは大抵の場合、観察者に対する呵責のない攻撃であった)初めて知ることが出来るわけであり、しかもそれが我々が得ることの出来る情報の全てであった。

機能別に類別しようとすると、思考回路が根底から異なるであろう宇宙生命体のプロファイリングを行なう羽目になり、複数の学者に応援を依頼してみたところ船頭多くしての格言通り専門別に意見が分かれ、始末の悪いことおびただしかった。

だから地球防衛軍は侵入者を外観で類別したのである。

 

 

 

ガミラス艦船史(3)ガミラス艦種類別考・2

 

当然、ガミラス側にはガミラス側の論理による類別があった。

機能別に分けられており、恒星巡航艦、惑星航行艦、戦闘艦、直訳するとこのようになるであろうか、この3種類に類別されている。

ガミラス側の類別は、搭載するエンジンの種類に依っていた。

恒星巡航艦は文字どおり恒星間航行の為、高速巡航に向く波動エンジンを搭載している。

惑星航行艦は狭い内宇宙を自在に飛び回る為出力を急速に制御し易い、それでいてそれほど高速を必要としない為、交換容易な小型安価の波動エンジンを搭載している。

戦闘艦は、当然戦闘の為、急速な出力変化に対応できるような特別に丈夫な波動エンジンを搭載している。

言われてみればしごく単純な理屈による類別である。

 

未だに恒星系内宇宙軍に止まっている我々地球防衛軍の視点からすると、ガミラスの言う巡航艦と戦闘艦の区別がつきにくいが、単純にすれば巡航艦は銀河間を渡り歩く船、戦闘艦は銀河内での行動を前提とした船であった。

もちろんガミラスとて最初は銀河をわたることなど考えておらず、従って恒星巡航艦という類別はなかった。

恒星系内専用の惑星航行艦と、外征艦隊用の戦闘艦という類別だけで良かった。

恒星巡航艦の出現と共に、その類別が特別に設けられたのである。

ガミラスにとっても銀河を渡ることが大変な苦労であり、エポックメーキングであったことがこの類別の変遷からも知れよう。

地球人の多くはまだその認識に至っていないが、ワープは決して万能ではないのである。

万一地球防衛軍が銀河を超えて活動するような時代が巡ってきた場合、地球防衛軍の艦種類別にも新たな一項目が追加されるかもしれない。

 

ところでガルマン・ガミラスとの和平条約の締結によって旧ガミラス帝国艦艇に関する情報が相当地球側にもたらされることになったわけだが、蓋を開けてみれば地球側類別とガミラス側類別との対応は、偶然にもそれほど差がなかった。

地球防衛軍の類別によるオカリナ型はガミラス側の恒星巡航艦に、円盤型は惑星航行型に、葉巻型は戦闘艦にそれぞれ対応させられ、その合致率は90%程度もあったが若干の例外もある。

このガミラス側の類別に厳密に従うと、我々の呼ぶ「ガミラス・デストロイヤー」にも恒星巡航艦に類別されるべきものと戦闘艦に類別されるべきものとがあったり、外観による判別に慣れてしまった地球人にとってはややこしい。

反対に、ドメル艦隊の円盤型旗艦の類別は地球側類別では円盤型となり、内宇宙用の円盤形空母と同類として扱われるため、その運用思想が不可解さを増して論争の種になるのだが、ガミラス側では惑星航行艦ではなくれっきとした戦闘艦であり、実にすっきりした説明が可能である。

もちろんガミラス軍の教官は地球防衛軍の教官と違って、三段空母を指し「葉巻型である」と臆面もなく言ってのける必要は全くもってない。

 

では、各タイプについて少し掘り下げてみよう。

 

 

 

ガミラス艦船史(4)恒星巡航艦・1

 

「ガミラス・デストロイヤー」として今日でも我々地球人類の間に広く知られているオカリナ型は、最もポピュラーな艦艇である。

我々の目に映った「ガミラス・デストロイヤー」は、高速を生かした襲撃戦法を得意としていて、数も多く、どの戦場にも出現し、大型艦を守っている雰囲気があった。

それが我々が「駆逐艦」と名づけた理由であった。

高速の反面装甲は極めて脆弱で、追尾できる速度であればオールド・スペーシィと呼ばれた頃の地球防衛軍艦艇の装備するミサイルで撃破が可能だった。

一方で当時の地球艦艇が装備していた所謂「高出力」レーザーカノンでは、このガミラス・デストロイヤーの装甲ですら貫通できなかった。

傷だらけになって帰投してきた地球戦艦のカメラがしばしば記録していた、地球側レーザーの太い光条が乱反射して四散するあの異様な光景は、未だに苦々しい記憶として我々の脳裏に残っている。

あの映像は我々防衛軍将兵の精神を徹底的に打ちのめし、技術的無力感からノイローゼに陥り自殺に至る者までいた。

ガミラス側艦艇の装甲がすべからく優れた対光学装甲であったので、今日の感覚からするとまるで低出力である地球側レーザーカノンでは全く通じなかったのだ。

 

ところで今日我々がガルマン・ガミラスから入手できる資料によると、我々の駆逐艦という分類はガミラス側では通じない。

ガミラス側では、「標準型巡航艦」という分類である。

標準型巡航艦は情報収集を主たる目的とし、遠距離を進出、若干の戦闘を行なえるように設計された万能軽艦艇であった。

ほぼ円筒形の艦内は生命維持に関わる装備に多くの容積が割かれ、高度に自動化されていた為に乗組員数は少なく、居住性は極めて良好、というよりも快適ですらあった。

であるから、地球的な概念でこれを表現するならば「デストロイヤー」ではなく「クルーザー」と呼ぶべきであったろう。

我々地球人にとっては意外なことだが、悪名高き「ガミラス・デストロイヤー」はガミラスにとって戦闘艦ではなかったのである。

武装は3連装可動砲台が2、単装固定砲台小型6、ミサイル発射管は4が標準であった。

いくつかの他星系軍事力との接触を経た現在の基準から評価すれば、確かにかなりの軽武装である。

 

 

 

ガミラス艦船史(5)恒星巡航艦・2

 

そもそもガミラスにとって「標準型巡航艦」とはどのような存在であったのだろうか。

当時の地球人は知る由もなかったが、ガミラス本星は星としての寿命が尽きかかっていた。

実際に残された時間がどの程度かという結論の出ない議論は避けるが、ガミラス人の一般的な認識としては相当に切羽詰まった状況であったようである。

時の為政者たちの急務はガミラス人が移住可能な惑星の発見であった。

 

惑星探索船の任務は、未知の宇宙へ可能な限り速やかに進出し、情報を収集することである。

長期間の行動に耐えうるだけの機関性能、乗組員の肉体的・精神的健康を損なわない良好な居住性が最優先に求められた。

戦闘を主目的としたわけではないので、対衝撃装甲はそれほど必要がなく、典型的な異常気象であるところの恒星嵐に備えて対光学装甲が求められた。

また探索先には敵対的な文明が存在する可能性もあり、自衛できるだけの武装が必要とされた。

しかも無数にある惑星を直接探索するために、とにかく多数の派遣が必須条件であった。

 

しかしガミラスはこのような目的に合致する艦船をほとんど保有していなかった。

既存艦艇の多くは航続距離が短く、高価であった。

また「標準型巡航艦」の登場以前のガミラス宇宙船は、性能面では鈍足に過ぎ、急速建造するにしては規格がバラバラ、惑星探索任務には全く不適であった。

ヤマトはガミラスの旧式貨物船の1隻をビーメラ星と呼ばれる惑星で一度目撃している。

東アジア州ジャパンのクシダンゴ(おわかりになるであろうか?)という形容がぴったりの不格好な船は標準化以前の旧式貨物船の一つだ。

恒星系内での運航を前提とした設計であったものを徐々に改良して恒星間航行が可能なようにした船であり、当然のことながら性能は芳しくない。

よって、ガミラスは新たに大量の探索船を建造しなくてはならなかったのである。

 

ここで繰り返すが、ガミラスは星としての寿命が尽きかかっていた。

惑星探索に用いるべき宇宙船を新たに揃えるだけの資源もまた既に枯渇しかかっていたのである。

ガミラスは植民星もいくつか抱えてはいたが、サンザー太陽系付近の星域は比較的古い文明が多く、支配下に置いた星もほとんどが有用な資源が尽きているという有様であったそうだ。

そして物的な面もそうであるが、人的資源も枯渇気味であった。

人口の激減に苦しんでいたのは何もイスカンダルだけではなかった。ガミラスもまた同様な現象が起きていた。

そこでガミラスは既述の条件に加え、物的人的両面にわたる優れた省資源性をも考慮した長距離巡航艦の設計を開始したのである。

 

この「標準型巡航艦」の出自は、今や地球人にとっても非常に理解しやすいものであろう。

移住問題は2203年の太陽異常膨張に伴う騒動で、地球人にとっても他人事ではなくなっているからだ。

地球防衛軍も移住惑星の探索任務に短期間であるが従事することになったが、その時に得た教訓は多い。

その最大のものは、惑星の探索任務は手数が多くなくては話にならないということである。

地球が用意した探索用の宇宙戦艦は、ヤマトを筆頭に全部で24隻に過ぎない。広大な砂漠に水を撒くが如き様相を呈し、任務の重大さに対してあまりにも非力であった。

しかしこれだけの数を捻出しただけでも、太陽系防衛に関して深刻な影響を及ぼしたのである。

その意味で探索任務に戦艦を充当した我々の選択は、当時のガミラスに比し賢明ではなかった。

地球とガミラスの間の、宇宙に対する認識と経験の差が如実に表れた結果と言えよう。

ただ、地球が移住問題を切実に考える機会を得ないままでいたならば、恐らく地球とガルマン・ガミラスの和平条約締結はなかったことであろう。

 

 

 

ガミラス艦船史(6)恒星巡航艦・3

 

ガミラスの技術と経験の総力を結集して設計された巡航艦は、彼らの要求を高度な次元で満たすことに成功した。

ここでガミラスは直ちに新型巡航艦の建造に国力のほぼ全てを注ぎ込むことに決したのである。

新型巡航艦を「標準型」と定め、「標準型」以外のタイプの建造を一切禁止したのだ。

宇宙艦隊の整備すら一時的に停止した。

これは民族危急の事態を迎えた時の選択として、必然かつ賢明な措置であった。

探索に必要な人員は宇宙艦隊の将兵からの配置転換によって賄い、宇宙艦隊には経験の未熟な者を補充したという。

大胆な人事措置の甲斐もあって、完成した標準型巡航艦は比較的短期間の訓練の後、ガミラス星の四方に移住先を求めて出発できたのである。

時局柄、膨大な数の軍関係者を抱えるガミラスならではの方策である。現在の地球ではとてもこう順調には運ぶまい。

 

しかし大マゼラン星雲内には移住先は発見できなかった。やがて彼らは銀河系の探索を開始する。

さしもの標準型巡航艦と言えど、大マゼラン星雲から銀河系までの往復は荷が重く、銀河系内に基地の設定が開始された。

この銀河系の探索が、標準型巡航艦に様々なバリエーションを生ずるきっかけとなった。

基地建設のため標準型巡航艦が改造され、輸送艦型が建造された。

銀河系内の海図のない暗黒空域を探索するため、無人型に改造された巡航艦が出動した。

探索先で標準型巡航艦が攻撃された際に備え、報復の為の武装強化型が用意された。

このように標準型巡航艦は必要に応じて改造され、様々な局面で便利に用いられたのである。

 

また各タイプには大きさにも何サイズかあった。

これらの大きさも勘案すれば、サブタイプは1ダースを優に超える。

しかし全てが標準型巡航艦をベースにして設計に若干手を加えただけの艦であった。

それほどまでに標準型巡航艦の設計は健全であり、乗組員の肉体的・精神的健康を守る為に取られた大きな容積は、多くの可能性を生み出したのである。

私はこの万能艦を設計したガミラスの造船技師に敬意を表したい。

ちなみに外観で類別していたオールド・スペーシィは、標準型巡航艦のサブタイプを見て、大きさによって弩級戦艦だの巡洋艦だのと分類していた。

地球人が本当の意味での弩級戦艦を知るのはもっと後のことである。

 

 

 

ガミラス艦船史(7)恒星巡航艦・4

 

長い探索の果てに、やがて1隻の巡航艦が太陽系に立ち寄る時が来た。

恒星の性質は穏やかで、彼らの故郷のサンザー星によく似ていた。

探索を進めるうちに、第三惑星が質量や惑星の年齢、自転・公転周期、恒星からの距離、衛星の有無など様々な評価点で移住先として適合することが判明した。

報告を受けた本星では様々な角度から情報が検討され、移住が決定されたのである。

彼らにとっては残念なことに、第三惑星には幼稚な宇宙文明が育成されつつあったが、ガミラス星の状況からは別の惑星の発見もしくは長期にわたる移住交渉を許すほど時間はないように思われた。

原住生物の排除が決定され、ガミラス帝国の総統デスラーは太陽系方面部隊の設立を宣言する。

銀河系方面艦隊は直ちに銀河系オリオン腕探索部隊付属武装戦隊を改組して独立太陽系第一戦隊を編成、太陽系侵攻を開始した。

これがガミラス戦役と呼ばれる、地球人にとってあの辛く苦しい忍耐の日々の始まりであったのだ。

 

ガミラスによる地球侵攻作戦の主役が「ガミラス・デストロイヤー」、即ち非戦闘艦たる標準型巡航艦であった点に疑問を抱く読者は多いであろう。

それはなぜか。

答えは単純である。

ガミラスにとっても地球は遠かったのだ。

冥王星に前線基地を築くまで、銀河系外縁部より太陽系へ単独で侵攻し得る能力を持つ艦艇は、ガミラスにとっても選択肢は多くはなかった。

消去法でこの標準型巡航艦が残ったに過ぎない。

しかし武装強化型巡航艦48隻で構成された独立太陽系第一戦隊は、よちよち歩きの地球艦隊に対して圧倒的な威力を見せたのである。

初期の3ヶ月間の進攻作戦において、地球の各国軍(当時はまだ統一された地球防衛軍ではないことに注意して欲しい)艦艇合計117隻未帰還に対し喪失はわずかに3隻という、結末は戦闘と呼ぶにはあまりに一方的なものであった。

ようやく内宇宙航行を行なうようになったばかりの地球人にとって、銀河を渡り歩く速力を備えたこの巡航艦は、まるで駆逐艦のように軽快で機敏な理想的な戦闘艦艇に映ったのである。

このエピソードからも分かるように、この武装強化型こそが我々の呼ぶ「ガミラス・デストロイヤー」そのものである。

3連装可動砲台4基12門、3連装固定砲台4基12門、単装固定砲台4基4門、ミサイル発射管4門の重武装を誇り、若干の対衝撃装甲も追加している有力な戦闘艦であった。

武装強化の代償として、オリジナルの標準型巡航艦に比べて速度と特に航続力が落ちている。

それでも純然たる戦闘艦に対して航続距離は段違いの長さを誇っており、類別上は依然として恒星巡航艦であった。

 

冥王星に前進基地を構えた後も、巡航艦は主力であり続けた。

ガミラス本星からの距離は依然として天然の障害であり、戦闘艦を送り込むことは可能であってもその整備設備や消耗物資を送り続けることが困難であった。

ただでさえ長くそれ故に細い補給路は、遊星爆弾などの惑星改造用資材の輸送が戦闘用資材の輸送に対して優先されるべきであった。

ならば非力な地球相手には戦闘艦として十分に通用し、なおかつ独力で進出が可能な標準型巡航艦に戦力を頼ろうという判断は自然である。

ガミラス側の判断は、許される範囲内において実に的確であった。

こうして冥王星基地がヤマト特別陸戦隊の強襲によって覆滅されるまで、ガミラスの太陽系方面部隊では巡航艦が主力であったのである。

 

 

 

ガミラス艦船史(8)恒星巡航艦・5

 

標準型巡航艦の建造数はガミラス各星系において各型合計約5000隻を数えた。

実に恐るべき生産数であるが、その喪失数もまたすさまじい。

ガミラスが派遣した探索船の数およそ3000に対し喪失数は何と2000を超えた。

主たる喪失原因は戦闘ではない。戦闘による損失は全体の喪失数からすれば微々たるものであった。

海図のない未知の宇宙の航海がどれだけ危険を伴うものか、この割合を見ても窺い知ることが出来よう。

 

更に白色彗星帝国のくびきから脱したデスラー総統が民族の生き残りを連れて銀河を放浪した、いわゆる「長征」は有名だが、この際数においてガミラス船団の中核をなしたのが標準型巡航艦であった。

方々に派遣されていた標準型巡航艦は残存数も多かったのである。

第二のガミラス星探索の先兵としてガミラス船団の先頭に立ったのも標準型巡航艦であった。

ガルマン星を発見したのも標準型巡航艦の1隻であり、当時同星を支配していたボラー連邦と最初の砲火を交えたのもそうであった。

ガミラス民族の未曾有の危機を救うべく生み出された標準型巡航艦は、遂にその使命を全うしたのである。

ガルマン・ガミラス建国後の今となっても標準型巡航艦は優れた省資源性と汎用性が評価されて未だに建造が続いている。

辺境警備と連絡任務にはうってつけのため、今後もまだまだ生産が継続されるであろう。

ガミラス標準型巡航艦の物語はまだ終わっていないのである。

 

ところで最近のデスラーズパレス発外電に、ペルセウス腕外縁部のある太陽系の惑星でガミラスの派遣した標準型巡航艦が擱挫しているのが発見されたというニュースがあった。

このニュースは我々ガミラス戦役当時の地球防衛軍将兵にとっては非常に感慨深いものがあった。

ヤマトが土星の衛星タイタンで発見した突撃駆逐艦「ゆきかぜ」に似た状況だったからである。

もちろんガルマン・ガミラスにおいては熱狂的に報道された。

遭難船の船内は重要箇所がきっちり処理されており、肉筆の遺書とビデオメッセージが残されていたそうである。

擱挫時の状況や船体の破損状況、遭難原因と所見、それまでに調査した惑星の調査結果の報告と続き、最後にほんのわずかだけ私的なメッセージがあったとのことである。

デスラー総統はこの殉国の英雄たちを自ら親しく弔うため、わざわざ親衛隊内に標準型巡航艦を装備する部隊を臨時編成してまで辺境に足を運んだ。

この様子は地球でも放送された。

赤茶けた薄暗い惑星の上空で編隊を組んだ標準型巡航艦が虚空に向けて弔砲を放つ姿には、物悲しいものを感じざるを得なかった。

 

 

 

ガミラス艦船史(9)惑星航行艦・1

 

本格的な外宇宙航行用の艦艇には不得意なことがある。

それは障害物の巣窟とも言うべき込み入った恒星系内での行動である。

こんなことは我々が本格的な外宇宙艦隊を整備するまで思ってもいなかった障害であった。

外宇宙は本当に何もない。そこを航行する際は出したいだけの速度を出せるのである。

しかし一度太陽系に入ると高密度で物体が浮遊している。

外宇宙を航行する時のような速度で航行していたら、すぐに小惑星か何かに衝突して損傷を受けるであろう。

回避運動も結構だが、そのような曲芸飛行ならぬ曲芸航行を行なうよりは素直に速度を落とすべきだ。

高速を出すことを目的に建造されている外宇宙船は、出来ることなら恒星系に入りたくないというのが本音だ。

地球防衛軍の航海士がまず最初に、そして繰り返し繰り返し徹底して叩き込まれるのが、この内と外との速度制限の違いである。

 

あれだけ版図が拡大しているガルマン・ガミラスですら、依然として恒星系内のみを行動範囲とする近距離宇宙船は存在している。

大半は波動エンジン装備であるが、通常動力であるものもそう珍しくない。

ガミラス時代でもそうであった。

恒星間航行時代に入って久しいガミラスにとっての宇宙船は、基本的に外宇宙船であった。

しかし恒星系内の往来用として比較的小型の宇宙船が何タイプも存在する。

恒星系内での往来であればワープ能力は限定的なものであるか、あるいは全くなくても差し支えがない。

また急激な加減速を繰り返し遠慮なく酷使されるので、エンジンの寿命はもちろん短くなる。

これらの要因から、やや小型の安価な波動エンジンが用いられていた。

ガミラスではこれらの宇宙船を総称して、惑星航行型と類別している。

 

 

 

ガミラス艦船史(10)惑星航行艦・2

 

ガミラスが太陽系に持ち込んだ惑星航行艦は、ほとんど全てが戦闘用艦艇であった。

ガミラス戦役時代の人間には憎らしくも懐かしい、あのヒトデのような円盤型空母もその一つである。

惑星航行型の特徴の一つは、機動性の良さである。

恒星巡航型の巡航艦(ガミラス・デストロイヤー)の速度に圧倒された地球防衛軍は直ちに小惑星帯を防衛圏として固めた。

小惑星帯では巡航艦の速度は減殺され、地球側で唯一効果が望める対艦ミサイルの命中率が増す。

イカロス天文台を拠点とし、多数の小型宇宙艇(いわゆる航空機)を投入した地球軍の迎撃は、一時的に成功を収めたかに見えた。

しかしながらガミラスはここにはるばる持ち込んだ惑星航行型戦闘艦を投入したのである。

巡航艦とは段違いの機動力を発揮したガミラス円盤型空母とそのブーメラン型戦闘機は地球軍機をあっという間に駆逐し、イカロス基地は殲滅された。

地球防衛圏は再び突破され地球本土まで押し込まれてしまったのである。

 

太陽系に持ち込まれたものは小型空母と、今度こそ駆逐艦と呼ぶに相応しい軽快艦艇(実際は小型なのでコルベットと呼称した)、そして我々防衛軍関係者がその出現に震撼した強襲揚陸艦くらいであろうか。

いずれも円盤型をしており、水平方向への推進器がずらりと舷側に並べられていた。

居住区は船体中央部に集中しており、Gの影響を最小限に抑えている。

当然ながら船体外縁部の装備は特に頑強な構造となっており、特殊金属が多用されている。

撃墜した円盤型駆逐艦を調査した際に、これらの構造からガミラス艦の機動力を逆算したのだが、信じられない程の値がはじき出されて困惑した覚えがある。

攻防の能力は標準型巡航艦に比べれば低く、地球側の兵器でも撃破可能であったが、機動力は抜群であった為に地球防衛軍としては嫌な相手だった。

 

なお、これらは冥王星基地壊滅後も太陽系内各惑星に残存していたが、ヤマト出撃後に再建された地球防衛艦隊によるいわゆる「レコンキスタ」の過程で一掃された。

当時の我々は、遊星爆弾による攻撃への復仇の念、そしてヤマト帰還を支援するという義務感から、彼らを容赦なく狩り出し殲滅していった。

本星からの補給を絶たれ孤立したガミラス将兵の心情はいかばかりであったか、今ならば思いをはせることも出来る。事実、どうだったのであろう。

しかし彼らは語る術を持たない。彼らの存在の事実を今に伝えるのは、ただ爆撃痕だけである。

 

 

 

ガミラス艦船史(11)戦闘艦・1・戦艦・1

 

近代のガミラスは戦闘国家である。

その主戦力は、重装歩兵の密集部隊でもなく騎兵隊でもなく水上艦隊でもない、宇宙艦隊であった。

しかもそれらは恒星系間を駆け抜ける能力を持つ外宇宙艦隊である。

ガミラスは艦種類別上ではこれらの外宇宙用艦艇を大きさや用途に関係なく「戦闘艦」という類別にひとくくりにしている。

戦闘艦の中に、空母や戦艦、巡洋艦(準砲戦戦力としての巡洋艦であり、巡航艦とは異なる)、駆逐艦などがある。

大型で強力な波動エンジンを搭載、加減速を速やかに行なえる反応速度を持っており、武装や装甲も強力であったが、その代わり恒星巡航艦に比べて巡航能力は重要視されなかった。

戦闘艦は補給路の完備された銀河内に閉じた範囲での活動を想定されていたのである。

 

我々地球人は、ガミラスの戦闘艦艇と言えば真っ先に「ガミラス・デストロイヤー」を挙げるのだが、ガミラス側ではこれは戦闘艦ではないことは先に述べた。

ヤマト乗組員を除き、地球人が目撃した回数の最も多い戦闘艦は、太陽系方面部隊司令官シュルツの座乗した超弩級戦艦であろう。

あれこそは地球人が目にした最初のガミラス戦闘艦であったのだ。

さすがにガミラスも巡航艦のみで攻略が完了するとは思っていなかったらしく、後詰めとして超弩級戦艦を配置したのである。

サイズはヤマトより一回り小さく、今日から見ても極めて有力な戦闘艦であった。

地球防衛軍はオールド・スペーシィ時代に一度だけこの超弩級戦艦と対決し、北米第三艦隊が全滅の憂き目に遭っている。

それでもこの超弩級戦艦は滅多に出動することがなかった。

この艦が出動した後、冥王星基地への宇宙船の出入りが格段に増えたことが観測されているし、ガルマン・ガミラスから入手した輸送船の行動資料もこれを裏付けている。

戦艦が物資を馬鹿食いするのは古今東西共通ということだ。

その補給路の細さが、我々地球人を滅亡の危機から救ってくれたことになる。

 

なおこの超弩級戦艦は、冥王星基地放棄後に残存艦隊の旗艦となってヤマト阻止を狙ったが、小惑星帯を巧みに利用したヤマトの反撃を受け撃沈されている。

この報告が入電した際の地球防衛軍司令室内の驚嘆と感動は筆舌に尽くし難いものがあった。

誰も一言も発することなく、ただただヤマトからの報告文の文面を追っていた。

司令部勤務のある士官がデスクにあった制服姿の写真を手に取り、モニターに近づけた様子が強く印象に残っている。

にこやかに微笑んだままの写真の彼に、あたかも文面を読ませるような仕草であった。

 

 

 

ガミラス艦船史(12)戦闘艦・2・戦艦・2

 

超弩級戦艦の他の戦艦型としては、TVドラマ「宇宙戦艦ヤマト」で有名になったドメル将軍(提督ではないのか?)の乗る「ドメラーズ3世」がある。

まさに新型艦艇であり、これが太陽系内に姿を現していたら恐らくは直ちに雛壇型とか楔型という名前で新たな類別が生まれていたことであろう。

幸いなことに楔型戦艦の類別は1年後になって初めて追加されることになった。

楔型戦艦は、性能が超弩級戦艦に比べてランクアップしており、特に武装が格段に強化されている。艦容もスマートだ。

外見からは見えない部分においても指揮通信能力が整備されており、戦域級の指揮能力が備わっていた。

ガミラスとしては、次期主力戦艦にと目論んでいた期待の新型艦であった。

しかし航続力に限っては従来型に比べ大分劣っていたようである。

 

この楔型戦艦の系譜は我らがヤマトによるガミラス本星壊滅と共にぷっつりと途絶えているが、その原因はここであった。

デスラー総統の「長征」の際には航続力が短いことは絶対的な悪であったのである。

設計当時の想定ではさして問題にされなかった航続距離に足下をすくわれたのだ。

ガルマン・ガミラス建国後の銀河大戦においても航続力が重視されたため、強力な戦闘力を誇るにもかかわらず楔型戦艦は全く建造されていない。

余談であるが、ヤマトは異次元断層でこの楔型戦艦を含むガミラス艦隊と遭遇したが、ヤマトは安全策を採って戦闘を避けている。

後に入手した情報によると、その攻撃力には実に侮り難いものがあった。

実際に交戦に及んだ場合、相互に大きな損害を負っていた可能性が高いと思われる。

 

楔型戦艦の生産数は極めてわずかで、大マゼラン星雲方面の戦線に投入されたに止まる。

それ以上の建造は標準型巡航艦や後に述べる戦艦空母の生産に造船能力が圧迫され、許容できるものではなかった。

従って竣工した艦はまさに虎の子扱いで、有力な将星の元にしか配備されなかった。

総統の信頼の証として1隻を与えられたドメル将軍は、しかしこれを返上した。

この決断もまた名将の誉れ高いドメル将軍ならではの英断であった。

長大な補給路の終端部に活動を余儀なくされる銀河系方面への配備は、いかなガミラスと言えど夢のまた夢だったのである。

 

 

 

ガミラス艦船史(13)戦闘艦・3・航空母艦・1

 

宇宙艦隊の最重要戦力は何かと問われると、地球人は何はともあれ戦艦と答えるであろう。

アンドロメダやヤマトのような、艦首に巨大な砲口が穿たれている波動砲搭載戦艦への絶対的な信頼の証である。

ではガミラス人に同じ質問をした時はどうであろうか。

答えは、空母である。

ガミラスは伝統的に空母による航空機の運用を好んだ。

 

大マゼラン星雲のサンザー太陽系、つまりガミラス本星の所属する恒星系であるが、この周囲は暗礁空域が多い。

ガミラスはこの地理的条件を有利に活用した。

高機動小型艇(地球では形から航空機と呼ぶ)による戦法を編み出したのである。

やがて恒星系内での艦隊戦闘では、この小型艇による攻撃が機動力の劣る外宇宙艦隊に勝ることが証明された。

しかも何もない宇宙のど真ん中での艦隊戦闘は滅多に起こらない。何か目的物がある恒星系内、あるいはその付近での発生機会の方が圧倒的に多い。

ガミラスはこの統計を重く見て、彼らの戦力の最重点を恒星系内での戦闘が得意な小型艇に振り向けることにしたのである。

もちろん小型艇には恒星間航行能力どころか惑星間航行も厳しいので、当然、母艦が必要となる。

このため、ガミラスは空母を発展させていったのだ。

 

そのガミラスが弛まぬ研鑚により作り上げた最初の本格空母は、上甲板側に飛行甲板を持つ艦船であったようだ。

ガルマン・ガミラスの大使館付武官に一度聞いたことがある。

彼もはるかな昔のことで直接見たことはないがと断った上で、簡単な絵を描いてくれた。

ちょうど超弩級戦艦の上をそっくりナイフで削って平らにしたような感じであったらしい。

甲板が細長く見た目があまり宜しくはないが、使い勝手もあまり良くなかったようだ。

建造数もそう多くはなかったが、何はともあれ最初の空母機動部隊を編成して内宇宙での攻防戦に投入されたとのことである。

この不格好な空母が、後の三段空母を駆使するガミラス空母機動部隊の先祖なのであった。

 

 

 

ガミラス艦船史(14)戦闘艦・4・航空母艦・2

 

ガミラス空母は試行錯誤を重ねながら、着実に成長していった。

当初の長い甲板は影を潜め、やや短めの幅の広い滑走路を持つ艦形に変化していく。

時間当たりの発進機数を稼ぐために、甲板を3段に増やす。

着艦時の事故を防ぐために着艦甲板を別に設ける。

このような改良を全て盛り込んだ艦隊型空母の決定版が、三段空母である。

搭載機数は機種にもよるがおおよそ80機から100機であり、その全機を20分以内に発艦させることが可能という極めて優秀なプラットホームであった。

固有の戦闘能力は低いが、航続距離は比較的長く、以後ガミラスの標準型空母として多数が建造されている。

標準型巡航艦と組んであちこちの戦場を飛び回っていたようだ。

 

航空打撃力は実に破壊的で、三段空母3隻で編成される標準的な機動部隊の場合、恒星系内で地の利を生かした奇襲に成功すると、一個艦隊を壊滅させることも容易であったようだ。

その反面、防御が弱く、逆襲を受けて空母を失うこともままあったと言われる。

我々地球人にとっても、「七色星団の決戦」としてドラマチックに描かれているヤマトとドメル艦隊との攻防で、クライマックスの大逆転劇における三段空母の脆さが印象深いことであろう。

何につけ講談調で考証の弱いTVドラマではあったが、あの場面だけは本当のことであった。

信じ難いほどの幸運であったが、事実は小説よりも奇なりである。

ガミラス側の記録を紐解くと、他の戦線でも同じような場面が何度か展開されたようで、ガミラス側も防御力不足に苦慮していたようである。

この弱点は最後まで解決されなかったが、戦法の改良によって次第に損害は防がれるようになっている。

 

このように欠点も目に付く空母ではあるが使い勝手の良さは折り紙付きであり、三段空母は数多く建造され、長く用いられた。

デスラー総統の「長征」にも、各地で生き延びていた自活部隊の空母が数隻参集している。

ガルマン星解放の際、対地制圧に活躍したのもこの三段空母であった。

ガルマン・ガミラス建国後もしばらくの間は創生期のガルマン・ガミラス機動部隊の中核を担っていたが、後継艦の就役が進むに従って退役が進んだ。

現在では2隻が練習空母として在籍しているに過ぎない。

他に1隻がデスラーズパレス郊外にあるガルマン・ガミラス戦争博物館に展示してあるとのことである。

 

 

 

ガミラス艦船史(15)戦闘艦・5・航空母艦・3

 

三段空母で編成されたガミラス空母機動部隊は各戦線で縦横無尽の活躍を見せた。

航空機による攻撃で足を止め、戦艦や巡洋艦による追撃で止めを刺すという戦法が常であった。

航空機の運搬できる装備では、大型艦を撃沈することは結局のところ困難であったからだ。

空母戦については地球防衛軍の場合でもガミラスと共通している。

白色彗星帝国侵攻時のフェーベ沖海戦において、ヤマト率いる独立航空艦隊が戦果を拡大した際が好例であろう。

白色彗星帝国軍の超大型空母は我が航空攻撃によって大損害を被ったが、その巨体は容易に沈むことを知らなかった。

ヤマトと航空戦艦の主砲砲撃によってようやく撃沈できたのである。

 

しかしガミラスが移住惑星の探索の手を銀河系にまで延ばし始めると、彼らの保有する空母機動部隊戦術に新たな問題が惹起するに至った。

つまり大マゼラン星雲外に戦場が移ることが想定された為、長距離護衛艦の不在による決定打不足が厳しく指摘されたのである。

移住可能な惑星が高度な文明の支配下にあった場合でも、武力に訴えてでも移住を強行すべしという意見が軍部に限らず焦燥感に苛まれる国民の中にも広くあった。

武力発動の際、ガミラス遠征艦隊の中核になるのは当然空母機動部隊である。

その為長距離護衛艦の建造が検討され、当初は超弩級戦艦の大幅な改造が想定されていたようである。

この時ガミラス指導部の一部で、三段空母の防御力不足も一気に解決してしまおうという企図が存在した。

結果的にこの意見が採用され、三段空母とは全く別の、固有の攻防力を重視した大型空母の設計が開始されたのである。

 

完成した新型空母は、再び従来の一段甲板方式に戻ったように見えたが、上甲板は回転式となり裏側にはミサイルや各種小口径砲が多数隠蔽されていた。

また後部には艦上構造物が設けられ、大型砲台と司令部を収容できる広い艦橋が設置された。

航空機の搭載能力は100機を超え、三段空母と同等かそれ以上であったが、甲板が1段であることから同時発艦能力は劣っていた。

その代わり密閉型の艦内は広く余裕があり、各種補給物資が大量に搭載できた。

一部の戦線では給兵艦の役割も兼ねていたほどである。

後期建造艦は機関を換装して増幅装置を強化し、デスラー砲(収束波動砲)キャリアとしても活躍している。

これも艦内容積の大であることの証左で、ほとんど一種の万能艦と化していた様子が見て取れる。

航続距離も戦闘艦としては異例なほどに長く、艦内の広い容積ともあいまって移民母船のテストベッドを兼ねていたのではないかとの説もある。

この新型空母は、ガミラスでは大型砲台の威容から戦艦空母と呼ばれたが、地球側では戦闘空母という分類がされている。

 

 

 

ガミラス艦船史(16)戦闘艦・6・航空母艦・4

 

ガミラスは標準型巡航艦の生産が一段落つくと、戦艦空母の建造整備に本腰を入れた。

急遽整備された戦艦空母は、太陽系進攻が決定された時点で10隻が就役を済ませ、なお同数が建造中であった。

戦艦空母の打撃力は超弩級戦艦には一歩譲るものの巡洋艦を軽く凌駕し、決定打不足は一気に解消された。

また防御力・耐久力も高く、大損害を被っても生還率はすこぶる高かった。

航空戦の指揮と追撃戦の指揮が同時に可能である戦艦空母は各戦線で歓迎され、たちまちガミラス最有力艦の地位を占めることになった。

広い艦橋も歓迎された一因であろう、単純に床面積だけで比較するならば、戦艦空母の艦橋は三段空母の3倍はあった。

 

移民惑星の攻略という当初の目的に従い、銀河系方面艦隊には優先的に3隻が配備され、うち1隻は本命の太陽系方面部隊の編制に加えられた。

戦艦空母1隻のみで三段空母なしという変則編制は、当時の地球防衛軍の戦力がいかに侮られていたかという証左である。

悔しいがその判断は正しく、地球防衛軍の残存艦隊など戦艦空母1隻に軽く殲滅されていたであろう。

ところが配備予定の戦艦空母はシュルツ司令の超弩級戦艦と交代して任務に就く予定だったのだが、オクトパス星団で嵐に巻き込まれ遭難損傷し、バラン星に引き返してしまった。

戦艦空母が遭難せずに冥王星基地に到着していたらヤマトの運命がどうなっていたかと思うと、当時の地球防衛軍関係者は今でも恐怖感に包まれる。

なぜならヤマトは幾度となく戦艦空母とあいまみえているがその都度苦戦を強いられているからだ。

特に初めて対戦したドメル艦隊との戦闘の際には、ヤマトは危うく撃沈される寸前にまで追いつめられた。

幸いかなドメル艦隊に配備された戦艦空母は前期型でデスラー砲の装備がなかった。

もし後期型戦艦空母であったら、ヤマトはデスラー砲によって止めを刺されていたはずである。

 

戦艦空母は設計がガミラスの時代の流れに合致していたこともあり、その後も重用され続けた。

デスラー総統も本艦型をことのほか気に入り、1隻を専用艦に指定し内装を変更して前線視察に用いていた。

オリジナルの専用艦は戦闘に参加する機会なく、ガミラス本星攻防戦の際ドック内にて失われた。

従って「長征」の際に旗艦として座乗した戦艦空母は後期型の1隻であって本来の専用艦ではない。

このデスラー総統旗艦の戦艦空母は白色彗星戦役ではヤマトと砲火を交え、イスカンダル星救援作戦では舳先を並べて共に戦っている。

運命の悪戯とは面白いものである。

「長征」の間を通じてデスラー総統の旗艦であった戦艦空母は、ガルマン星解放戦争の際に戦闘で大破、ガルマン星の地表に擱挫した。

擱挫後も除籍されることなくそのままデスラー総統の旗艦、つまり執務室として機能したのだが、現在のデスラーズパレスはその傍らに建設されている。

 

 

 

 

ガミラス艦船史(17)戦闘艦・7・巡洋艦と駆逐艦

 

最も基本的な戦闘艦である巡洋艦は、比較的古い時期に基礎が確立している。

面白いことに、地球の海の上を走る古典的な意味での船の発達史における「巡洋艦」とほとんど同じ発展を遂げているそうだ。

即ち、最初は宇宙船が開発され、次第に大型化し、やがて適当な大きさの宇宙船に武装が施されるようになる。

これが巡洋艦の始祖であった。

巡洋艦はやがて戦闘艦として定着し、全ての戦闘艦はこれを基礎に発展を始めた。

大型化・装甲化された戦艦、より機動性を求めた駆逐艦、小型艇の搭載を重視した空母などに分化・専業化したのである。

余談ではあるがこの話を知った時、ガミラス史における宇宙開拓時代の存在が初めて明らかにされた。

宇宙に乗り出すこと即ち宇宙戦争ではなく、最初はもっと単純な冒険心と探求心が原動力であったのだ。

ガミラスにもそのような時代があったのである。

 

巡洋艦の外観はオカリナ型で、ガミラス艦艇のスタンダードは全くこの巡洋艦にあった。

標準型巡航艦の基本設計もこの巡洋艦から得たものである。

大型砲台が前方に2、後方に1という構成、艦側面にも固定砲台が装備されていた。

その他ミサイル等で武装されているが、バリエーションは多い。

駆逐艦は砲台が前方1に減らされ、砲台そのものも中型である。

巡洋艦、駆逐艦の航続力は概して短く、ガミラス戦役時においてもかなり旧式化していた。

標準型巡航艦の武装強化型が一時その代役を務めていたほどで、これら巡洋艦・駆逐艦の戦闘能力はあまり期待できなかった。

この種の艦艇の旧式化と適時の更新失敗が、我々地球人にとってはかなり有利に働いたのは間違いがない。

これらの艦種が有力な新型艦に更新され、多数が太陽系方面部隊に配備されていたなら、地球の戦いはより一層厳しいものになったであろう。

 

しかし後継艦が全くなかったわけではない。

異次元断層でヤマトが遭遇した艦隊には、楔型の新型駆逐艦が配備されていた。

楔型駆逐艦は機動性が高く武装も強力で極めて有力な戦力ではあったが、いかんせん航続距離があまりにも短かった。

楔型戦艦と同様の設計思想であったためか、次世代艦としては今一つ問題があったようだ。

一時ドメル将軍がこれら新型艦で編成した艦隊を率いていたが、バラン星までの航海にも四苦八苦する始末で、怒ったドメル将軍は安定した性能を持つ旧式艦に再編成を命じてしまったという。

銀河系方面艦隊の主力部隊が再編成中にヤマトがバラン星に到着してしまったため、ドメル将軍は苦しい戦いを強いられたのである。

ガミラスにとっては間が悪かったが、ヤマトにとってはまさに天佑神助であった。

新型の楔型駆逐艦はもちろん後の「長征」に耐えられるわけもなく、ガルマン・ガミラス建国後は標準型巡航艦をベースにした艦型が採用されている。

時代に恵まれない悲運の高性能艦であった。

 

 

 

ガミラス艦船史(18)戦闘艦・8・強襲艦と偵察艦、指揮戦闘艦・1

 

ガミラス独特の艦種として指揮戦闘艦がある。

戦艦でも空母でもないほとんど丸腰に近い高機動の軽快艦艇で、その存在は地球防衛軍司令部においてもヤマトが生還してから初めて知られるようになった。

あのドメル艦隊の円盤型の旗艦「ドメラーズ2世」のことである。

地球側では円盤型として類別されたが、同種の円盤型艦艇に比べて極めて大型であった点と、何にも増してあれだけ強力な空母機動部隊を指揮下に収めているという点で、円盤型の中では際立って異彩を放っていた。

現在では指揮戦闘艦というガミラス側の類別が知られ、惑星航行型の空母等と異なる類別であることがわかっているが、その形態と異様な能力について合理的な解説がなされていない。

しかし指揮戦闘艦を語るには前準備として2つの艦種を語る必要がある。

 

この種の艦艇の起源は、意外に古かったらしい。

惑星航行の時代から存在したもので、元来は接舷移乗戦闘を行なう強襲艦と呼ばれる艦であった。

敵艦に取り付く固定アームや吸着アンカー、突入用穿孔チューブなどの特殊兵器を装備していた。

これらを駆使して海賊のように敵の艦底部に取り付き、そこから兵士を送り込んで相手の船を乗っ取ったり捕虜を得るのである。

もちろん臨検用にも使えるので、案外用途は広かったようだ。

その他の装備は軽装備で、砲座を制圧するためのパルスレーザーと、敵艦処分用の大型ミサイル2発を懸吊していただけである。

 

強襲艦なる艦種はガミラス時代に既に類別上から削除されている。

戦闘艦に穿孔チューブなどの配備が広く進んだ結果、強襲艦という特別な艦を用意する必要はなくなった。

強襲艦はここで役目を終え、類別より削除されたのである。

艦種はなくなったが、移乗戦術そのものは今もなおガルマン・ガミラス艦隊内に伝統として生きている。

ガルマン・ガミラス艦は状況さえ許せばしばしば移乗戦を仕掛け、捕虜と情報を得ようとしているのだ。

その為に大抵の戦闘艦には一個分隊以上の海兵隊が配備されている。

ガミラス海兵隊は一部で言われるような反乱防止の為の兵力ではないことには留意すべきであろう。

(余談ではあるが、海兵隊突入の逆の発想として、ガルマン・ガミラスの宇宙要塞には船そのものを捕らえる捕獲・臨検設備が存在する。運用実績は不明)

 

 

 

ガミラス艦船史(19)戦闘艦・9・強襲艦と偵察艦、指揮戦闘艦・2

 

強襲艦は、出現当初は惑星航行艦であったのだが、やがて外宇宙艦隊に随伴する必要性から大型化し戦闘艦に類別が変更された。

目標を追尾する艦であるため航空機並みの機動性を付与され、同時に深宇宙探信儀など情報収集設備も必要となった。

高いレベルの機動力と捜索力を有する強襲艦は、やがて別の任務を帯びることになった。

空母機動部隊が打撃力を発揮するためには何はともあれ敵を発見する必要がある。

しかし一方で空母の存在の秘匿は絶対であり、機動部隊の艦載機自らが索敵を行なうことはあまり得策ではなかった。

そこで元来が惑星航行艦であり恒星系内航行に高い適性を持つ強襲艦が索敵を担ったのである。

ここに強襲艦という艦種から偵察艦という新たな艦種が生まれたのだ。

 

偵察艦は浮いた海兵隊の収容スペースを情報管制室に充てた。

船殻そのものは強襲艦の流用であったため、艦のサイズは強襲艦と何ら変わらず、戦闘艦の中では極めて小型であった。

移乗戦任務がなくなったため穿孔チューブなどの突入用装備は一部は外されたが、固定アーム等は偵察艦母艦との接舷作業に便利なために残された。

武装はほとんどなく、自衛用のパルスレーザーやミサイルが若干装備されていたに過ぎない。

たったこれだけの改装で、極めて強力な偵察艦となったのである。

 

偵察艦の強力な索敵能力は空母機動部隊にはなくてはならない存在となり、機動部隊には必ず複数の偵察艦が付属するようになっていった。

元来が惑星航行艦であり航続力が短い偵察艦のため、一時期は偵察艦母艦まで存在したほどである。

だがこの点が偵察艦の滅ぶ原因となった。

いくら必要とは言え空母機動部隊が偵察艦専門の母艦を随伴するのは不経済そのものであり、偵察艦の代替を空母の搭載する艦載機に求める圧力は増す一方だったのだ。

やがて空母搭載の長距離隠密偵察機や、想定戦場に先行して敷設しておく無人偵察ドローンの開発、配備が進み、偵察艦の活躍の範囲は狭まっていった。

そして遂に偵察艦は役目を終えたと判断され、艦種類別は廃止されたのである。

 

 

 

ガミラス艦船史(20)戦闘艦・10・強襲艦と偵察艦、指揮戦闘艦・3

 

絶頂期にあった頃の偵察艦は更に別の用途を見出され、新たな艦種を生むに至った。

偵察艦の充実した情報設備と強襲艦譲りの人員収容設備は、艦隊旗艦としての適性を見出されたのだ。

これがより専門化して、指揮戦闘艦として独立した艦種となったのである。

ガミラスの初期の空母機動部隊の旗艦の多くはこの指揮戦闘艦であった。

ガミラス戦史上には、偉大な指揮官たちがしばしば指揮戦闘艦を駆って登場し、あまたの伝説を残している。

 

指揮戦闘艦は隠密性という足枷がなくなったため艦型が小型である必要がなく、次第に増大していく情報設備と航続力の要求を満足させるため、より一層の大型化が進んだ。

しかし大型化すればするほど機動性は失われ、他の大型艦との差別化が出来ないという問題に直面することにもなった。

外宇宙艦隊が成長するに従って、より大型の戦艦や空母に旗艦を定める例も増えていったのである。

だがガミラス独特の「武人」という文化的背景から、この斬り込み艦の末裔のような指揮戦闘艦は一部将校の間で偏愛され続けた。

ドメル将軍もその一人であり、デスラー総統より楔型戦艦「ドメラーズ3世」を与えられるまでは、進んでこの円盤型の指揮戦闘艦「ドメラーズ2世」に乗り込んでいた。

ガミラス人のイメージでは、武勇をもって鳴るドメル将軍には、立派な戦艦御殿より粗野な指揮戦闘艦が似合うとのことだ。

ドメル将軍は、ヤマトとの決戦に臨むに当たって再び指揮戦闘艦「ドメラーズ2世」に司令部を置いた。

あるいは配下の将兵に武勇を示し、士気を鼓舞したかったのかも知れない。

ドメル将軍はこの指揮戦闘艦の伝説にまた一篇の叙事詩を加え、そして自ら伝説の彼方に去っていった。

 

指揮戦闘艦という類別はガミラス時代はもちろん、現在も存在する。

ガルマン・ガミラスになっても、ガミラス以来の伝統を誇る一部の機甲艦隊は、代々このタイプの改良型を旗艦として用いているのだ。

それは我々地球人にとっての連隊旗に似た意味を持つのかも知れない。

ガミラスは伝統ある誇り高き国家なのである。

 

 

 

ガミラス艦船史(21)戦闘艦・11・敷設艦・1

 

ガミラス艦船としてはマイナーであるが、ガミラス艦船発達史上避けて通ることのできないのが敷設艦である。

 

ガミラスにはかつて「要塞の時代」があった。

現在のような宇宙艦隊万能時代ではなく、宇宙要塞による防衛が叫ばれた時代があったのである。

ヤマトはイスカンダルへの旅の途中、ガミラスの無人宇宙要塞と遭遇、交戦したことがある。

これはガミラス軍の秘密兵器であった。

この例のように宇宙要塞を主要航路や要衝に配置し、接近する敵性宇宙船を攻撃、破壊するのである。

 

地上における要塞と異なり、宇宙要塞はある程度の移動力を有する。

無論、艦船に比べれば要塞の移動力は著しく劣り、艦船側は要塞を迂回する自由を持つ。

艦船がどうしても要塞に接近しなくてはならない条件がなければ、設置した要塞は全く無意味となるのだ。

従って惑星防衛用の衛星要塞として設置されるもの以外は、存在価値があまり認められなかったのも事実だ。

(もっとも白色彗星という移動要塞の出現以後は、要塞の価値が改めて見直されるに至っている)

これに対して、艦船側の通行の自由を阻害して要塞に接近を強要することが検討され、その為の方策がいくつか考案された。

ガミラスはヤマトに対してこれら実験中の誘引策のうち4つを使用している。

1つはアルファ星で使われた大規模電磁障壁、1つは同じくアルファ星で用いられた金属腐食性ガス、もう1つがあのデスラー機雷である。

 

 

 

ガミラス艦船史(22)戦闘艦・12・敷設艦・2

 

デスラー機雷の採用は比較的最近であるが、管制機雷の着想そのものは古い。デスラー機雷の新機軸と言えば自律管制と長寿命の2点である。

機雷兵器そのものの解説はここでは行なわないが、このデスラー機雷の敷設を行なったのが敷設艦である。

宇宙空間での機雷堰の設置は極めて広大な領域にわたるので、特別な装備を持った大型艦を必要とするのだ。

ガミラス敷設艦の形態は超弩級戦艦に類似しているが、やや小振りで、兵装はあまりない。

標準的な機雷堰を敷設できるだけの機雷1500発を搭載し、これを地球時間で約1日以内に敷設可能な能力を持つ。

 

このように見ると敷設艦は取り立てて特徴のある艦ではないし、また地球防衛軍にその存在を暴露したこともない。

しかしガミラス艦船設計局は、敷設艦を「活動を暴露しない」という一点にのみ狙いを絞り、大胆な新機軸を用いていたのである。

莫大なエネルギーを用いて空間の歪みを人工的に作り出し、高位次元に一時的に潜り込むという新兵器を実験的に採用したのだ。

この試みは成功し、敷設艦は並外れた不可視性を備えるに至ったのである。

もっとも機雷そのものを不可視化するわけではないので、劇的な効果を生むには至らなかった。

もちろん敷設艦の成功によって次元潜航という全く新たな遮蔽技術を確立したガミラスは、この技術を用いた本格的な戦闘艦の設計を開始した。

これがガルマン・ガミラスの次元潜航艇の萌芽となるわけであるが、ガミラス時代には高位次元の高エネルギー圧に耐えられる魚雷の開発が遅れ、戦力化に至らなかった。

 

以上でガミラス艦船史の本編を終わる。

現在入手できる情報でガミラス艦船史を追っていったが、不明な部分や私の理解が至らない部分もあり、今後も更なる研究が必要である。

しかしながら他恒星系生命体との初接触に星間戦争、超光速航行という様々なマイルストーンをわずか10年そこそこの間に凝縮して通過していかざるを得ない状況に追い込まれ、技術的回顧など行なう余地すらなかった我々が、ようやく実戦以外の研究を行なう余裕を持ち得る時代になったという証明にはなるであろう。

ガミラスやイスカンダルが長い時間をかけて乗り越えてきた技術的はハードル群を、地球は脱皮してしまった。

しかし技術を使う側の地球人はいまだ脱皮していないのではないだろうか。

我々は今、地球に拠って生存するという目的に比べあまりに分不相応な力を手にしているという自覚が必要である。

これからは導入した技術を咀嚼する時代でなくてはならない。

かつての仇敵であるガミラスが種族の滅亡の危機を脱し理性を取り戻した今こそ、彼らの積み重ねた経験を吸収するチャンスである。

技術を生んだ相手の文化を理解してこそ、技術に溺れることなくこれを御する立場になり得るのである。

 

さて、ここで本編は終わるが、拾遺としてあと2回連載を続けることをお赦し願いたい。

 

 

 

ガミラス艦船史(23)拾遺「ガミラス・デストロイヤー」・1

 

ガミラス艦艇の紹介を連載してきたが、最後に2回に分けて個人的な体験を書きたいと思う。

艦船史とは離れるがご了承頂きたい。

 

現在の地球防衛軍、ニュー・スペーシィの基礎は全く「ガミラス・デストロイヤー」に拠っている。

オールド・スペーシィは非常な苦戦を強いられていたが、それでも粘り強く戦った。

特に小惑星帯での迎撃戦では、航空機隊の活躍により数隻のガミラス・デストロイヤーを瞬時に葬るという大戦果を挙げることにも成功している。

最大の戦果は、大破漂流中のガミラス・デストロイヤーを捕獲したことであろう。

撃墜したガミラス・デストロイヤーの残骸を調査した地球防衛軍技術本部は、予想してはいたがやはり大きな衝撃を受けた。

波動エンジンが最も恐るべきオーバーテクノロジーであったのだが、それ以外にも強力無比なレーザー砲、超空間通信機、超空間探信儀、変わったところでは海図などが調査団の目を引いた。

調査団の科学者や技師たちは、材質的な不利を承知の上でデッドコピーし、兵器や艤装類の多くを建造中のヤマトに搭載した。

海図も、文字は読めないし大マゼラン星雲など一部星図は解読が間に合わないままだったが、これもコピーされてヤマトに積み込まれている。

地球防衛軍司令部において解読がようやく完了し、ヤマトの航路の折り返し点の正体を知った時の我々残留組の驚愕と狼狽、そして絶望を察してくれるであろうか。

実際にはヤマトはその時点で既にガミラス本星を突破し帰路についていたのだが、我々がそれを知るのはまだ2ヵ月も先のことであった。

もちろんその時の司令部員の狂喜乱舞ぶりは今思い出すと恥ずかしいくらいのものであったが、聞けば全地球規模で同じような騒ぎだったという。

 

ガミラス・デストロイヤーの調査には、私も調査団の一員として参加した。

私が驚かされたのがその良好な居住性であった。

艦の大きさの割に居住区が広く取られ、各種のレクリエーション設備、サービス設備があったのである。

これが軍艦かと目を疑ったものだが、ヤマト帰還後の情報解析によってそれが巡航艦であったことを知った。

奇妙に思われるかもしれないが、ガミラス人がガミラス人と呼ぶべき人間型生命体であったことは当然のように知られていた。

TVドラマ「宇宙戦艦ヤマト」では、あたかもヤマトが初めてガミラス人が人間型であること明らかにしたように描かれていて、今ではそれが真実のように受け止められているがそんなことはない。防衛軍関係者の間では既に常識であった。

ヤマトは初めて「生存している」ガミラス人と接触したという表現が正しい。

ガミラス・デストロイヤーに比べ、オールド・スペーシィ時代の地球防衛軍の戦闘艦艇の艦内は極めて狭く、お世辞にも快適とは言えなかった。

動力設備が艦内容積の多くを食い潰していたからである。

その点ヤマトは元来が移住用に設計されていたため居住区画は広く、1年という長期航海にも乗組員への負担は最小限に押えられたものと思われる。

またヤマトは従来型の機関設備を装備する予定で設計されていたので従来にない大型艦になっていたが、波動エンジンを装備するように改設計された際、容積にかなりの余裕が出来た。

新たに生じたこの余裕を何に振り向けるか、技術本部内では幾度となく激論が交わされた。

艤装委員長であった沖田十三少将(当時)の鶴の一声で、艦載機格納庫に決定されたのであった。今思えば誠に卓見であった。

ガミラス戦役におけるヤマトの奇跡は、搭載された多数の艦載機が大きな成功要因の一つであったが、その経緯とはこのようなものだったのである。

 

 

 

ガミラス艦船史(24)拾遺「ガミラス・デストロイヤー」・2

 

回収されたガミラス・デストロイヤーの残骸は徹底的に分析された。

ここから得られた技術や情報は、地球防衛艦隊の再建に大いに役立った。

そしてレコンキスタが達成され、ヤマトが帰還し、地球防衛艦隊の完全復興後はその存在はすっかり忘れ去られてしまった。

私個人も、次々と計画され続々と就役していく地球艦隊の設計や整備などの作業に忙殺され、いつしかガミラス・デストロイヤーを忘れてしまっていた。

しかし昨年開催された地球防衛艦隊観艦式に参加するため、ガルマン・ガミラスから1隻の大型戦闘艦と共に「ガミラス・デストロイヤー」、つまり標準型巡航艦・武装強化型が4隻やって来たのだ。

主役はガルマン・ガミラスの新鋭・大型戦闘艦であったが、私は傍らのガミラス・デストロイヤーを見てたまらなく懐かしい思いに駆られたのだった。

我慢できなくなった私は、観艦式の後に無理に頼み込み、ガミラス・デストロイヤーに乗せてもらった。

艦橋に立った私は感動した。

部品部品に分解され、システムとしては死んだ状態しか知らなかったあの「ガミラス・デストロイヤー」の生きた姿を、私は初めて見ることが出来たのだ。

 

いくつかの装置は新型のものに取り替えられていたし、私の知らない装備も追加されていたが、全体としての雰囲気は私の頭に深くに刻み込まれている、あのガミラス・デストロイヤーのままであった。

先方にとっては既に旧式化して久しい標準型巡航艦の計器類を眺め、触れ、少年のようにはしゃいでいる異星の退役将校の姿は、随分と奇妙に映ったのではないだろうか。

愛しむような眼差しのこの退役将校にほだされたのか、ガミラス・デストロイヤーの艦長は私に艦内を見るかと訊ねた。

その申し出に私は即座に応じた。

もはや旧式艦であり機密性は低かったのであろう、私の希望する箇所は全て見せてくれた。

居住区では突然の珍客にもかかわらず乗組員が不動の姿勢で迎えてくれた。

機関室では波動エンジンが聞き慣れたあの独特なハム音を響かせており、機関科の乗組員が調整作業を行なっていた。

私は、かつてパーツや実物から起こした線図を眺めながら数え切れないほど繰り返し想像した、それらが有機的に連動して一個のガミラス・デストロイヤーとして動く姿を、遂にこの目で見ることが出来たのだ。

 

私は十分に満足し、「実に素晴らしいフネである」と翻訳機を通して艦長に礼を述べた。

若い艦長は笑った。

艦長がちらりと走らせた視線のその先には、悠然と鎮座する大型戦闘艦の姿があった。

アンドロメダ級を優に超える巨体、多数の大型砲台を備え、その存在感は周囲を圧し睥睨している。

ガルマン・ガミラスの戦力を無言で代弁する、有力な宇宙戦艦であった。

きっと彼にとってあの新鋭艦は憧れなのであろう。その気持ちはよくわかった。

しかし私は真顔で敢えて繰り返した。

「この艦はガミラスの歴史を背負っている。素晴らしいフネだ」

艦長は、今度は笑わなかった。